再開しました 

2013年4月25日 日常
再開しました 

KING

2010年9月30日 日常

2010年7月22日 日常
寒暖の差に驚く

油ぎった顔を見て

照りかえる蛍光灯の方に振り向いた

収束していく今日に気づいて

体はただ重みを増していく

比重を増した体は建物のなかへ

油は蒸し暑い都会へと分離する

さらりと澄んでいるのはこちらであるはずが

実はただ沈澱している

ひかるひかるぬらぬらと

内側から見る油も蛍光灯に揺られて

七色に光っている


上映

2010年3月10日 日常
昨日は青のスクリーン
今夜は白のスクリーン
説明はありません、答えもありません
あなたが対峙しているのは
無意味な一色のスクリーン
始まった本編は真っ白
音はなくひたすらに、目の前には白いスクリーン
視界に昔からある黒い点を端に追い詰めれば
ほらまた新しい黒い点が出てくる
目を閉じるなら、青い残像が支配する
白いスクリーンを前に
あなたの視覚はあまりに無力
ここでは人は裏返し
光の前に内側が焼きだされてしまう
網膜も血管も細胞も
光の前では追い詰めても現れる黒い点
体の奥を反映する
糸くずに近い黒い点
昨日は青のスクリーン
今夜は白のスクリーン


アップルパイ

2010年3月8日 日常
爪やや伸びていて
髪もややのびている
睫毛には黄色く眼脂がまぶされ
日の光は眼脂を透かして虹色に見える
不調な体を震わせて
虹色の光から逃げるように
枕の匂いを吸い込んだ
不快な朝の匂いが
空腹を思い出させる
ねている体はただ、肉、骨、脂
体から離れれば腐敗してしまう
ならば肉体を離れて
腐敗する体を観察しよう
アップルパイを食べながら

蚊の話

2009年9月9日 日常
痒くしなければ
誰にも気づかれずに血を吸えるのに
それだけではつまらない
舐めた証を刻んでいくのだ
唾液を注入することで
征服したことを証明する
私が痒みを与えたから
あなたは不快な痒みに支配される
こんな小さな私でも
あなたをわずかに支配できる
こんな不気味な私でも
心と腹が満たされる

傍観者

2009年9月8日 日常
私は緞帳の表の赤い色を
演者は緞帳の裏の黒い色を見ている
それが開けば演者も私も
同じ空間に居るはずなのに
どこまで値段の高い席に行っても
あの舞台の上には入れない
ああ、照明が作りだすチンダル現象は
幻想的に舞台を彩る
才能をぶつけ合って勝負をするものたちを
照らしていくのだ
わたしはもうあの眩しいばかりの照明に
目を細めることは出来ない
ただ演者の道程を想像して涙するだけ
傍観者は完成された舞台に
文句を放つ隙間を探すだけである


背比べに意味があると信じるから
どんぐりたちは背比べ
頭の先がミツバチの針ほど先に出れば
見渡す世界は違うだろうと
わずかなつま先の長さを競って
生まれたままの運命を否定する
背伸びした足がバランスを崩して
床に寝そべったその日に
となりにも横になったどんぐりがいることに気づく
一度横になったどんぐりは起き上がらない
横になればみんな
目線は等しいと気づくから

夜に逃げ込む

2009年8月25日 日常
昼間の都会は比べてしまうから
私は個室の夜に逃込む
ここはおそらくみんなぐったりと
四肢を投出して娯楽に興じているから
比べられない堕落を共有する
そして時計が日付を刻むころ
夜を求めて外へ飛び出す
そのころには比べる物も少ないから
ようやく屋外の清らかな空気に癒される
人を恐れる心に
さわやかな朝は訪れない
あぶれた男達が夢見るのは
従順なメイドと男色と近親相姦
ポルノ映像が切り替わる合間に
黒い液晶画面に映る薄ぼけた表情の男に驚く
青い光が戻ると安心し
ひがな一日性欲と向き合う
世間は悲しい性欲に充満している
淫猥な設定が一人歩きし
芸術はそれに迎合していく
翻弄された芸術はさびしく行き場を失っている
女を守る大義も失った
酒に浸る意味も失った
そこに芸術は生まれない
残るのはただ悲しい性欲だけ
あぶれた男達が夢見るのは
従順なメイドと男色と近親相姦




その感触をしゃぶり尽くそうと
彼女のふとももに噛み付いた
唾液に濡れた皮膚は
見事、歯型に凹んでいた
指先でくぼみを確かめると
くすぐったそうにこちらを見た
その感触をしゃぶり尽くそうと
今度は首筋に噛み付いた
犬歯は筋を分けて動脈に達したから
中身がぴゅうと噴出した
指先で止めようとすると
それが感触の正体だという
ならばその感触をしゃぶり尽くそうと
赤い中身に吸い付いた
吸い尽くしたあとには
あの感触はもう消えていた

夏休みに書くことが何もなかった
というより書いて出すほどの出来事がなかったから
日ごとに汚れ行く部屋の絵日記を出した
普段よりも部屋に居る時間が長いから
汚れるスピードは早すぎて
4日目以降は飽和状態となった
散乱する衣服が足の踏み場を奪って
池に浮かぶ石の通路のように
わずかに見えているフローリングの床を
表現するのに一苦労だった

あれから十数年
引き出しの隅から出した絵日記と
なんら変わらない情景がいまここにある

冷ややかな感性

2009年8月18日 日常
たくさんの人が賛同してくれるはずと
革命の詩を詠ったが
手を叩いているのは一人だけ
あとはみな目端で軽蔑するだけだった

たくさんの人が軽蔑するだろうと
街頭で全裸になってみたが
たくさんの人が手を叩いて
私の勇気を賞賛した

おだてられた私は木に登り
やれ裸踊り やれ逆立ちと
民衆の要求に答えるが
しかし手を滑らせて落下すると
だれも助けには来なかった

重力に負けた哀れな裸の男を
大衆は目端で軽蔑するだけだった

昼夜の逆転

2009年8月17日 日常
翌日が恐ろしくて
なんだか寝ないで居た朝には
やけに空は赤く遠くに見えていた

台風は過ぎていった
地震ももう収まった

勘違いした日暮は
朝日に向かって日暮れを予告し
海辺は異様に情景の食い違いをみせた

余震はなくなった
みんなもう寝静まった

昼夜が逆転した世界では
東の日光の質感も
日暮れの哀愁を漂わせる

その物悲しい違和感は
私のいびつな価値観だろうか
ああ、台風も地震も
まだここにいてくれ



陰気な花

2009年8月13日 日常
白いタイルを背景に
今年も咲きます陰気な花
薄ぼけた紅色の花弁をもつ
オオスカシバがあ好む花
建物の隅の喫煙所からは
去年のあの日の風景を
同じ角度から伺います
盆の空虚な都会では
蝉声、コンクリ、陰気な花が
多くの割合を占めているから
おそらく時間の概念は
わずかにねじれてゆくのでしょう
壊れ行く風景は
ぼとりと落ちる陰気な花
地熱に焼かれてジーワ、ジーワと音を立てる



湿気

2009年8月10日 日常
冷房が効いた部屋にいたから
湿気に会うのは今日初めて 
湿気よ こんばんわ
部屋に居るときは蛍光灯、蛍光灯、性欲
じっとり腿裏の汗、くそ熱い脛毛、髪の毛
ああ そういえばあの時も会いましたか
これは失礼
気持ち良いことの裏は
いつも気持ちの悪い湿気にまみれている

とかげ

2009年8月7日 日常
とかげはまた生えてくると高をくくって
尻尾を切り離して逃げました
しかし待てども待てども生えては来ませんでした
一度目も二度目も生えてきました
だからとかげは高をくくっていましたが
三度目は生えては来ませんでした
とかげは皮の水面に映る自分の姿に落胆しました

ああ、あんなに美しかった私の尻尾
長くそしてはりのある私の尻尾
これではまるで未熟な蛙ではないか
生えてこうい 生えてこうい

そうしてとかげは足の付け根の筋肉をヒクつかせながら
頭を抱えて尻尾が生えるのを待ちました
あまりに悩んで石ころに頭をぶつけました
それでも尻尾は生えてきませんでした

ああ、こんなに悩むのならあの時逃げなければよかった
尻尾が再び生えるのならばどんなことでも致しましょう

とかげは水面に歪んだ自分の顔を見て思いつきました
ああ、これならば悩まなくてすむ…
とかげは首の筋肉をヒクヒクと収縮させると
自分の首を切り落としました
力を失った首と胴体は水面に落ちてちゃぷちゃぷと
二つに壊れて流れていきました


毛玉

2009年8月5日 日常 コメント (1)
けえけえけけ
ひどく蒸し暑い真夏の夜
扇風機の傍で目を閉じて寝ていると
飼い猫が毛玉を吐いている
けえけえけっけ
目を潤ませてアアもう苦しそうに
褐色の液体に濡れた毛玉を吐き出した
そんな時に電話があって
母が死んだと知らされた
あのとき聞いた飼い猫の声は
遠くの母の断末魔
けえけえけっけ
誰にもわからないような
実にささやかな断末魔だった



花火にむかう

2009年8月3日 日常
花火に向かう群衆はサイダーの泡沫
頭だけ光を反射し、同じ方向に向かっていく
泡沫は町のネオンを浴びて
色とりどりの表情を見せる
泡沫は立ち上るだけ立ち上って
水際に集まった
今日ここに集まった者たちの
色とりどりの恋心は
それこそサイダーの泡沫のごとく
弾けて混ざる二酸化炭素
嗚呼、その濃度が濃すぎるから
私は窒息してしまう

105歳について

2009年8月2日 日常
105歳は天井の染みを数えた
そりゃあもう長いこと床に伏しているから
天井との会話も慣れたものである

105歳は在りし日の夢を見た
柳の木の下にたくさんの仲間が集った日のことを

105歳は悲しみに暮れた
現世に置いて行かれる境遇を呪うこともあるのか

105歳は念仏を唱えた
全ての人間の救いを願って

105歳は天井の染みを数えた
幾つまで数えたかわからなくなったから
また最初から数えている

105歳の一日はそうして暮れていった

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