塀ができたなら

塀ができたら良いじゃろな
私の四方を囲う
塀ができたら良いじゃろな
緑色の高い塀

四方を囲まれて
なかでうずくまっていると
日々の季節を感じなくなります
昼か夜かはさすがに頭上にある
四角の色でわかります
昼間の四角の色は白く不快なことが多いですが
たまにあおあおとすがすがしい気持ちになります
真夜中の四角の色は黒々と
闇そのものの色でございます

しかしある日
やけに四角の周りがきかきらと輝く夜がありました
弓のように体をそらせてみていますと
小僧が木陰から私をみやるように
満月が四角からはみ出して参りました
次第に中央にせり出してきて
塀の中に直方体の光柱を作り出すと
私は天を掴もうとして手を伸ばしました
高く跳び上がりました
掴むところはなく重力はそのまま私にしりもちをつかせました
何度もしりもちをつかせました
やがて満月は手からこぼれ落ちるように
対辺へと消えて行きました

塀ができたら良いじゃろな
そこにはだれもこないじゃろ
塀ができたら良いじゃろな
月が全てになるじゃろう